一目でわかりますか?

一目でわかりますか?

Mona Iguchi文: 井口(いぐち) 萌娜(もな) BS-Honors, MS

皆さんは、この写真の女性を見て、「あぁ、摂食障害持ちだろうなぁ」と一目でわかりますか?

ほぼ100%の人が、「いいえ」と答えるでしょう。
彼女の保険会社も、救急車の隊員も、例外ではありませんでした。

でも、不思議ではありませんよね。
彼女、心身ともに健康で、幸せそうに見えませんか?(この写真が、膝を怪我した時に訪れた、救急病院で撮られた、ということを除いては!)

でも真実は… 彼女は摂食障害だけでなく、大うつ病も患っていますし、自傷行動も日常茶飯事、オーバードーズや自殺行為のことを、24時間365日考えているんです。
そしてそのことを誰よりもよく知っているのが、この記事を書いている自分。
そう、この女性は、2年前(2014年)の自分自身です。ちょうど、心身ともにどん底に落ちる2か月ほど前。

もうみなさんお分かりだと思いますが、自分は日本人です。アメリカの大学に進学したため、ここ4年半はアメリカで過ごしていましたし、今はイギリスの大学院に通っているので、イギリス在住。それでも、自分は日本人なのです。

なぜ国籍が関係あるの?

最近、西園マーハ文先生が、日本の摂食障害治療の実態について、素晴らしい記事をお書きになりました(https://scontent-lhr3-1.xx.fbcdn.net/v/t1.0-9/13083181_1677996349129016_4132148082597714583_n.png?oh=83ff275a7d0c92c13ccdf00bead16682&oe=57A572A4)

その記事で、先生は日本にも摂食障害で苦しむ方がたくさんいると知って驚く外国人がたくさんいる、とおっしゃっていました。日本国内でも、摂食障害のことを知っている・理解している人がとても少ないのですから、無理もありませんね。自分自身、今まで生きてきて、「摂食障害」という言葉を聞いたことがない、という日本人に、たくさん出会いました。しかし、西園先生のおっしゃる通り、たくさんの日本人が摂食障害に苦しんでいる、というのが現状です。

自分は中高の同学年の生徒に、最低4人は明らかに摂食障害だとわかる人がいました。もちろん彼女たちは日本人。そして摂食障害に苦しんだ。自分もそうです。自分も日本人、そして摂食障害に苦しんだ。

摂食障害は誰にでも起こりうる病気

摂食障害を含め、多くの病気が見た目では判断できません。病気持ちなのか?本当はどれだけ苦しいのか?先ほど、明らかにと書いたのは、そういう訳です。

この写真に写る自分は、なんの問題もないように見えませんか?一年半前に手術した膝へのダメージはなさそうだよ。腫れてるのは炎症だね。」と医師から言われ、安堵してカメラにスマイルを向けている、どこにでもいそうな、アメリカ在住のアジアンガール。

でもこのたった2か月後、自分は精神科の救急病棟の、とても寒い一室にぽつんと座っていました。22歳の誕生日の二日前にオーバードーズし、翌日に強制救急搬送されたのです。そして、誕生日当日も精神科で過ごしました。これはいろいろな意味で、結構トラウマになる出来事だったのに、それでもまだ、大うつ病、摂食障害、自殺願望は、自分の人生を支配し続けました。

そしてこのわずか2週間後、自分は、期末試験の折り合いなどをつけるために、大学のキャンパスや町中を必死に走り回り、その最中にたくさんの電話もしていました。そして、なんとか飛行機に飛び乗りました。
一体何のため?

それは、もうあまりにも心身ともに限界が来ていて、学期末試験を目前に控えてでも、今すぐに摂食障害治療専門のレジデンシャル施設に行きましょう、というセラピストや主治医との決断だったからです。それだけ急を要していたのです。

レジデンシャル治療というのは、10人くらいのクライアントが同じ施設で寝泊まりし、24時間治療に専念する、というものです。

いわゆる病院と違うのは、シェアハウスのようなセッティングだということ。そして、命の心配をしなくて良い状態の人たちが来るところだということ。24時間セラピストやナース、サイクテクという人たちが一緒にいます。もちろん、栄養士や医師との面会もあり、平均的には3か月そこで過ごすと言われています。

救急隊員が「あなた、摂食障害には見えないね。」と言った

少し説明で話がそれましたが、何はともあれ、この写真が撮られたころ、それだけ心身ともに病に侵されていたのです。だけども、まさか2か月後にレジデンシャル治療に行かなければいけないほどだとは、だれも予想していませんでした。自分の命の恩人ともいえる、セラピストを除いては。

どう見ても、この写真の女性、元気そうですものね。オーバードーズ騒動で搬送されたとき、救急隊員が言っていました。「あなた、摂食障害には見えないね。うーん…まぁ在り得るとして、過食症とか?かな?」

このときの自分はオーバードーズや摂食障害のせいで、かなりぼんやりとしていたのに、それでも彼の言ったこの一言は、はっきりと耳に届きました。

先ほども言いましたが、摂食障害は誰にでも起こりうる病気。この救急隊員は、ラッキーでしたね。自分に下されていた診断は、過食症でしたから。でも、同じような外見で「非定型拒食症」という診断を下されていたかもしれません。この話から分かるように、医療の「プロフェッショナル」ですら、摂食障害には色々なタイプがあって、サイズ、性別、国籍など関係なく誰もが侵されうる病気だ、ということを、理解していないのです。

BMIはメンタルヘルスの良し悪しの指数ではない

保険会社から一通の手紙が届いたのは、レジデンシャル治療を始めて数週間したころでした。そこには、「あなたの体重とBMIは、医学的に危険な状態ではありませんので、保険は適用されません。」と書かれていました。

アメリカでは各自医療保険に入り、そこと提携している病院・治療施設や治療プログラムに行けば、保険対象となる、というシステムです。しかし摂食障害の治療に関してはとても高額(例: 一日で$1,500)なので、保険会社もなかなか首を縦に振りません。そのため、治療が必要な状態で受け入れてくれる施設やプログラムがあるのに、なかなか治療が受けられない、というケースが多発するのです。

保険会社からの手紙を読んだとき、適用されないと判断された、その理由にショックを受けました。彼らは「体重とBMIが死ぬほど危険ではないから」と言ったも同然。保険会社として医療にかかわる道のプロなのに、BMIがメンタルヘルスの良し悪しを表す指数ではないということを理解していないなんて…。BMIがフィジカルな健康の良し悪しに使われたとしても、そんなに正確ではないのにね。

自分はラッキーなことに、保険会社と折り合いをつけることができて、最終的には適用されるということになりました。しかしそれでも、レジデンシャルセンターを出てから数か月後に、3回も多額の請求書が送られてきました。一日$1,500ですから、トータルがどれくらいになるが、ご想像いただけると思います。

でも、こういう経験をしたのは、決して自分だけではありません。ほぼ必ずと言って良いほど、保険会社をめぐるトラブルは発生します。彼らがBMIと体重だけをベースに、適用・不適用と決めてしまうから。

何度も言いますが、摂食障害は体重や見た目だけで判断できるものではないのです。

世界摂食障害の日 : 2016年6月2日

もし自分がアメリカで学生をしている間に治療を受けていなかったら、今頃自分は生きていないでしょう。生死なんて簡単に口にするものではないけれど、それでも、そうはっきりと言えるほど、心身ともに病んでいたのです。

摂食障害は日本にいた頃からあり、自分だけの秘密として何年も隠し通していましたので、トータルの病気の期間はちょうど10年ほど。10年といえば、慢性化した摂食障害のカテゴリに分類され得る5年を、とっくに過ぎています。そして、深刻というカテゴリに分類される頻度で、摂食障害行動に出ていました。

そんな状態で、摂食障害治療が確立されていない日本に戻っていたら…?
今はイギリス在住ですが、イギリスでは確立されていることはされているのですが、国民保健の実態として、治療をスタートできるまでに最低でも半年待ち、というのがありますので、克服せずにイギリスに来ていたら、と考えても恐ろしいものです。

自分は、摂食障害を完治させた一人の人間として、バイリンガルであるということ、そして幸運にも様々な国で、摂食障害治療が確立摂食障害の分野にかかわれている人間として、これからも、摂食障害へのアウェアネスと正しい理解を広げるために、様々な活動をしていきます。その一部として#WeDoActと#WorldEDDayに参加します。

筆者紹介: 井口 萌娜
(通訳、翻訳者。生物理学士-成績優秀者、摂食障害と臨床栄養修士。MentorCONNECTメンター)

10年にわたり数種類の摂食障害、主に過食症を患った経験を持つが、現在は完治。日本出身だが、アメリカでの大学生活の間に摂食障害の治療を受けた。現在はUniversity College Londonで摂食障害と臨床栄養という修士号取得のために勉強中。

最終的な目標は、摂食障害治療を専門とする管理栄養士になることだが、現在は摂食障害関連の本・記事翻訳を担当したり、MentorCONNECTをはじめとする摂食障害に関する組織でのボランティアを精力的に行い、様々な経験と知識を身に着けている。そして、ブログやツイッターなどを通して、摂食障害克服のヒントや海外の治療実態を発信している。

ブログ: http://ameblo.jp/naia415/
Twitter: @MonaiaRecoverED

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